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  • 2020.8.17
  • 経営お役立ち

2020年6月にパワハラ防止法が施行!定義や企業側の対策も解説

2020年6月に、パワーハラスメントの防止を企業に義務付ける法律が施行されました。

この「パワハラ防止法」は、パワハラの基準を法律で定めることで、具体的な防止措置を企業に義務化することを目的に作られました。

パワハラのない職場をつくるには、パワハラと指導の違いについて正しい知識を身につけることが大事です。

今回は、そんなパワハラ防止法についてのお話です。

企業に義務付けられていることや、その定義についてもご紹介します。

2020年6月に施行された「パワハラ防止法」とは?

近年、よく耳にするようになった「パワハラ」。

2020年6月、パワーハラスメント(パワハラ)の防止を企業に義務付ける「パワハラ防止法」が施行されました。

施行は大企業が2020年6月、中小企業は準備期間を勘案して2022年4月から施行となります。

「パワハラ防止法」はパワハラについて法律で規定し、企業側に相談窓口の設置や再発防止対策を求めるもので、さまざまな防止措置の義務を企業に課しています。

このパワハラ防止法に違反した場合の罰則ですが、パワハラそのものに罰則規定が設けられているわけではありません。

しかし、厚生労働大臣による助言・指導および勧告の対象となり、勧告に従わない企業名が公表される場合もあります。

そして、もちろんパワハラが暴行罪や脅迫罪など刑法に規定された犯罪の成立要件を満たして有罪になった場合には、行為者には罰則が適用されます。

そもそもパワハラの定義とは?

パワーハラスメントは「立場的に優位に立つ者の言動の中で、業務上必要な範囲を超えたもの」を指します。

パワハラは労働者の就業意欲の低下や精神的な障害、離職率の上昇などを引き起こすだけではなく、パワハラを放置した企業の社会的なイメージは失墜し、ひいては業績悪化につながる可能性もあります。

しかし、なんでもパワハラと決めつけるのではなく、正しい知識を備えることがパワハラのない職場環境を作ることに繋がります。

それではパワハラの定義や、今回の防止法でパワハラの例とする6つの分類について詳しく見ていきましょう。

パワハラの定義

職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて「精神的・身体的苦痛を与える」または「職場環境を悪化させる行為」と定義しています。

職場におけるパワハラの定義は以下の3つ。

①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

③労働者の就業環境が害されるもの(精神的・身体的苦痛を与える言動)

このすべての条件が揃った場合、パワハラとみなされます。

これは正社員だけではなく“同じ職場で働く者”が対象となるため、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど全ての雇用形態の人が該当します。

代表的なパワハラの6つの分類

パワハラ防止法では「職場のパワーハラスメント」を6つに分類し、典型例を示しています。

①身体的な攻撃:暴行・傷害

  • 殴打や足蹴りをする
  • 髪をひっぱる
  • 物を投げつける

②精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

  • 相手の人格を否定するような言動
  • 侮辱的な言動
  • 業務の遂行に関する内容を長時間にわたり必要以上に激しく叱責する
  • 他人のいる場所での威圧的な叱責をくり返し行う
  • 本人以外の人間が見ることができるメールなどでの罵倒

③人間関係からの切り離し:隔離・仲間はずし・無視

  • 意に沿わない労働者を仕事から外し、長時間別室へ隔離する
  • 自宅待機や自宅研修を強制する
  • 集団で無視し、職場内で孤立させる
  • 職場の親睦会などに特定の労働者を呼ばない

④過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害

  • 本来の業務に直接関係がない作業を、長時間にわたり肉体的苦痛をともなう過酷な環境下で行わせる
  • 必要な研修などを行わないまま、対応できないレベルの仕事をさせ、完了できなかったことに対して厳しく叱責する
  • 業務と関係のない私的な雑用などを強制的に行わせる

⑤過小な要求:道理に反して・能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

  • 労働者を退職させる目的で、誰でもできるような簡単な業務を行わせる
  • 気に入らない労働者に、嫌がらせ目的で仕事を与えない

⑥個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること

  • 職場以外での継続的な監視や私物の写真撮影
  • 個人情報を本人の同意を得ずに他の労働者に暴露する
  • 有給休暇の取得理由に口をはさみ理由次第で却下する

厚生労働省では以上の6つに分類していますが、この6類型だけがパワハラにあたるわけではありません。

3つの定義を基準に考え、他にもパワハラと判断される行為があることを忘れないようにしましょう。

パワハラ防止法施行によって企業に義務付けられることや対策とは?

パワハラ防止法はパワハラを防止するための措置を義務づける法律ですが、具体的に企業はどんなことが義務付けられているのか、詳細がよくわからない方も多いようです。

厚生労働省が告示した「職場におけるハラスメント関係指針」には、具体的なパワハラの防止措置として次の3つの義務が記されています。

①社内方針でのパワハラの明確化と周知・啓発

企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと。

②パワハラの相談に応じ、適切に対応するための体制づくり

労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備すること。

③パワハラが発生した場合の迅速・適切な対応

職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと。

ではこの3つに関して、さらに具体的に取り組むべき対策をご紹介していきます。

パワハラ防止法の具体的な対策

具体的にどのようなものが対策として認められるか、詳しくご紹介します。

①社内方針でのパワハラの明確化と周知・啓発

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書で、パワハラを行ってはならない旨の方針を規定。パワハラの内容や発生の原因・背景を労働者に周知・啓発する
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等に方針を記載し、配布する
  • 労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施する
  • 懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発する

②パワハラの相談に応じ、適切に対応するための体制づくり

  • 相談に対応するための制度を設け、相談に対応する担当者をあらかじめ定める
  • 外部の機関に相談への対応を委託する
  • 担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応する
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、担当者と人事部門が連携を図る
  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行う

③パワハラが発生した場合の迅速・適切な対応

  • 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認
  • 被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を速やかに、かつ適正に行う
  • 事実が確認できた場合は、行為者に対する措置を適正に行う

上記のほかに、あわせて講ずべき措置として以下の取り組みも課せられています。

  • 相談者、行為者のプライバシー保護のために必要な措置を講じること
  • パワハラの申告を理由に、労働者の解雇や不利益な取り扱いをしないこと
  • その他のハラスメントの相談窓口と一体的、かつ一元的に相談に応じる体制の整備をする

いずれの対策も、パワハラについて、企業がしっかり理解と関心を深めたうえで実施することが大切です。

パワハラ防止法施行により、パワハラのないよりよい職場環境を

パワハラ防止法には企業にさまざまな義務が課せられ、それにあわせて対策を取る必要があります。

しかし、パワハラ防止法は企業の負担が増えるように思えますが、そうではありません。

今まで曖昧だったパワハラが法律で定義されることで、トラブルの回避や実際にパワハラ行為が起きた場合の対処も行いやすくなるなど、パワハラ防止法は企業にも大きなメリットになる法律です。

法の趣旨や指針が示す内容を理解して実行するとともに、職場ではお互いが思いやりの心をもってコミュニケーションをとるよう心がけましょう。

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